グルメリア神戸
こだわり料理人
アラン・シャペル 小久江シェフ

ソーリューの三ツ星レストラン「ラ・コート・ドール」のベルナール・ロワゾー氏に師事し、神戸出店とともに、日本人料理長に就任。1995年の阪神淡路大震災で撤退を余儀なくされるも、2000年より、神戸北野ホテル総支配人・総料理長として現代のフランス料理界をリードする山口氏。総支配人としてすべての面に徹底したこだわりを見せる山口氏の料理・サービスに対する想い、そしてその背景にあるものは何のだろうか―。


山口シェフとインタビュアーの上野事業部長

Q:料理人を志したきっかけは何でしょうか?

山口シェフ(以下Y):私の家では祖父の代から食堂をやっており、厨房に入ったりしていたのがきっかけで、中学くらいの時から料理人になろうと思いました。初めは卵と砂糖でいろんなものを作り上げるお菓子に興味があったのですが、それが結果的にはフランス料理の道へとなりました。

Q:渡仏し「ラ・コート・ドール」にお勤めの後、同店の神戸出店で日本人料理長として帰国されたわけですが、その時はどのようなお気持ちでしたか?

Y:フランスで三ツ星を取って一年が経ち、初の海外出店でしたので、フランス本国と同じ物を出したいという思いが強かったですね。

Q:フランス料理にも様々なスタイルがある中で、ヌーベル・キュイジーヌに対する考えをお聞かせください。

Y:我々がフランスで修行をする少し前にヌーベルキュイジーヌが一世を風靡したような状態があり、渡仏時には少し行き着いた感じでした。フランス人シェフ達もヌーベルキュイジーヌという言葉を好まないような風潮がありました。そのような中で我々が学んだものは第二のヌーベルキュイジーヌであり、ヌーベルとは呼ばず、「現代風フランス料理」といったニュアンスで呼ばれるようになっていました。具体的に何を指してヌーベルキュイジーヌというのか定義は定かではないと考えますが、流通革命が起こったり保存の技術が発達したりといった作り手側の状況変化、そして機械化が進み消費カロリーの減った生活になったお客様側の要求、これらの要因から生まれてきた新しい料理をヌーベルキュイジーヌと呼ぶならば、それは時代の要求により生まれた料理だと思います。

Q:山口料理長にとって、ベルナール・ロワゾー氏とはどのような存在でしょうか?

Y:抽象的な言い方ですが、料理業界では頂点の人ですが、トップとはピラノミッドの頂点ではなく、「シェフそれぞれの個性や与えられた環境の中で、それぞれの輝き方をすることだ」といった考えをされている方で、そういう意味では“こうあるべきである”ということを意識せず”自然にしていればいい”ということを教えてもらった人でしょうか。

Q:新しい料理の発想はどこから、どのようにして生まれてくるのでしょうか。

Y:年に数回発想が生まれます。そしてその発想を過去に学んだ引き出しの中のものと組み合わせ、様々な形で作り上げていく。時代の要望を受け入れ、自分の持てるテクニックを駆使し、いかに要望に答えるか。そしてそれをフランス料理の手法により作り上げていくことによって新たな料理が生まれるもではないかと考えます。

Q:ご自身が召し上がられた料理の中で最も印象に残っているものは何でしょうか?

Y:強いてあげるならば、ロワゾー氏のスペシャリテである蛙の料理でしょうか。蛙とパセリとニンニクのピューレを一皿の中に盛り込み必要なものだけで作り上げており、素材を引き立てる為に、最善の下処理を行った料理です。今でもその味は鮮明に覚えていますね。

Q:料理人として、最も苦労されたことは何でしょうか?

Y:今でも苦労は絶えませんが、やはり自分の思っていることを他の料理人に行ってもらうことでしょうか。やはりレストランはチームワークが重要ですので、自分の求めているものを他の料理人に正しく伝えることに注意を払っています。

Q:反対に最もうれしかったことは何でしょうか?

Y:震災でラ・コート・ドールがなくなり、全てを失い落胆した時もありましたが、縁があり神戸北野ホテルを再開するにあたって、新しいスタッフも集まりましたが、ラ・コート・ドールの時からのスタッフと共に再び働けることになったことですね。

Q:プライムリゾート賢島の受託をされていますが、今後もこのような依頼がありましたら受託されますか?

Y:日本のサービス業は欧米に比べると、プロ意識に欠けるように感じる部分があります。そのような中で我々は、プロの料理人、プロのサービスマン、プロのスタッフとして、お客様の喜ぶ顔を見たいという一心で働いています。我々のこういった想いを同じように持っている方からの依頼であればまた受託していきたいと思います。

Q:今後もフレンチダイニングの出店を検討されていますか?

Y:レストランとはサービスマンとのコミュニケーションや空間と時間を楽しむ場所と考えており、値段を少しでも抑え、昔ながらのレストランの楽しみ方を沢山の方に知っていただきたい。そういう思いで出店しています。ですので、場所等のご縁があれば今後も出店はしたいと考えています。

Q:次の時代を担う若い料理人にアドバイスをお願いします

Y:どのような職業でも同じだと思いますが、結果は直ぐに出るものではないので我慢することが重要です。継続は力ですので、一度決めたらまずは続けて欲しいです。

Q:来店されるお客様に何か一言お願いします。

Y:まずはレストランを楽しんでいただきたいと思います。お客様には希望をどんどん言って頂きたいです。食の好み、味付けの好みなど多くの情報をサービスマンに伝えていただければ、個々にあったサービスを提供できます。フランス料理レストランは決して堅苦しい店ではなく、周囲のお客様に迷惑をかけなければ、会話を楽しみながら食事を楽しんでいただければ良いかと思います。フランスではうるさいくらいに会話をしているのが普通なんですよ。

Q:最後に山口料理長にとって料理とは何でしょうか。

Y:コミュニケーションをとるツールであり、私の人生にとって欠かせないものです。